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作ったシステムを『使わない』と決めた — 写真同意システムのその後

2026-06-11 / 第18号 / 公開時点では下書き

第5号「「ちゃんと聞ける」仕組みを Claude と作った話」と第6号「写真同意システムを一段深くした半日」で、karaha.org の活動写真について、掲載前に本人ひとりひとりへ同意を取るシステムを作った話を書いた。Google Sheets と Apps Script と Cloudflare Pages を組み合わせて、2 日で動くものができて、同じ日のうちに一段深くして、コアメンバーでのテスト運用まで進めた。

今日はその後日談。結論から書く。このシステムは、使わないことに決めた(2026-05-31)。


計画どおりに試して、計画と違う答えが出た

もともとの計画はこうだった。まずコアメンバーだけで試す。問題がなければ、参加者全体に広げる。

テスト自体は計画どおりに進んだ。メールで専用 URL が届き、写真ごとに使用範囲を選んで送信する。第5号で書いた仕組みは、設計どおりに動いた。技術的な不具合で止めたわけではない。

実際に試してみて分かったのは、仕組みの出来とは別の話だった。この仕組みは、このコミュニティには合わない。それが、テスト運用から私が受け取った答えだった。

なぜ「合わない」のか

karaha.org が運営しているのは、精神保健福祉に関わる当事者・支援者・家族・地域の方々が、立場を超えてフラットに集まる場だ。「支援する側/される側」という線を引かないこと、構えずにいられることを、何より大事にしてきた。

テストで実際にどんなやり取りがあったかは、ここには書かない。第5号でも線を引いたとおり、その記録は参加してくれた本人のものだからだ。書けるのは、運営者としての私の判断の輪郭だけ。

写真 1 枚ごとに使用範囲を選んでもらう仕組みは、システムとしては正確で、誠実だったと思う。けれど、この場の空気の中に置いてみると、丁寧さよりも先に「手続き」の重さが立った。設計していたときは「選べることが尊重だ」と思っていた。いま振り返ると、選んでもらうことの負担を、私は画面の側からしか見ていなかった。同意の仕組みが守ろうとしたものと、この場が育ててきたものが、同じ方向を向いていなかった。それはコードの中では分からなくて、実際に場の人たちと一緒に試して、初めて見えた。

幸い、止めるにはいちばん軽い段階だった。テストで集めたのはコアメンバーの少量のデータだけで、外部の参加者のデータは入っていない。本格運用に入ってから止めていたら、撤回や問い合わせへの対応が宙に浮くところだった。全体に広げる前に小さく試す、という段階の踏み方にしておいたこと自体は、正しかったと思う。

3 原則の 3 つ目を、初めて本気で使った

このサイトの運営 3 原則の 3 つ目は「過去の自分を否定する勇気(方針を更新したら、それ自体が記事になる)」。立ち上げの日に書いた言葉だけれど、ここまで分かりやすい出番が来るとは思っていなかった。

第5号と第6号は、力を入れて書いた記事だ。設計も、ハマりポイントも、運用ルールも書いた。その続報が「使いません」であることは、書く側として少し勇気が要る。でも、方針が変わったのに記事だけ当時のままにしておく方が、build-in-public としてはずっと不誠実だと思う。だから、これを書いている。

作った時間が無駄だったとは思っていない。試したから、「合わない」が推測ではなく確信になった。作らずに頭の中だけで「合わなそうだからやめておこう」と決めていたら、たぶん今も「でも、あれば良かったんじゃないか」を引きずっていた。手放すためにも、一度は形にする必要があった。

正直に:片付けはまだ終わっていない

正直に書いておくと、決めたのは「使わない」ことだけで、撤去作業にはまだ手を付けていない。

残っているのは 3 つ。公開中の撮影方針の文面から同意ページへの導線を外して、問い合わせをメール窓口に一本化すること。同意ページと登録ページそのものを取り下げること。テストデータを削除して、バックエンドの公開を止めること。

「使わないと決める」と「片付ける」は、別のタスクだ。決定は 5 月末に出たけれど、片付けには手を動かす時間が要る。後日やる。ここに書いておくことで、自分への宿題にする。

作るコストが下がると、「作ってから決める」が選べる

今回いちばん持ち帰りたい学びは、これだった。

AI で作るコストが下がると、「作ってから判断する」が現実的な選択肢になる。

以前なら、この規模のシステムは外注するか、何週間もかけて自作するかだった。それだけ注ぎ込んだものに「合わないからやめる」とは、なかなか言えない。注いだコストの大きさが、判断のほうを歪める。

今回は違った。Claude と 2 日で作って、テストして、ひと月足らずで答えを出した。沈んだコストが小さいから、「合わない」を「合わない」のまま言える。作る前に議論し尽くすより、動くもので試して決めるほうが、早くて、確かだった。

同意を「ちゃんと聞く」という宿題そのものが消えたわけではない。仕組みは手放すけれど、問いは残る。この場に合うやり方を、これからまた探していく。それもたぶん、いつか記事になる。