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レーザー加工機のソフトも AI が操作した — rooo のレザーキーホルダーができるまで

2026-06-11 / 第21号 / 公開時点では下書き

うちの作業場には、レーザー加工機 xTool M1 Ultra がある。20W のダイオードレーザーで彫刻も切断もできて、カメラで位置決めまでしてくれる機械。これまでは商品ラベルの彫刻などに、ときどき使っていた。

今回、ショップ rooo のロゴ入り レザーキーホルダー を作った。横 60mm × 縦 21mm の小さな革タグにロゴを彫刻して、輪郭をレーザーで切り出す。ノベルティというか、店の小さな分身みたいなもの。

できあがった物より、新しかったのはその過程。専用ソフト(xTool Studio)の操作まで AI に任せた


これまでは「ブラウザとファイルの世界」だった

このメディアで書いてきた「AI に任せた」話は、振り返るとぜんぶ PC の中で完結していた。会計の月次入力、3 サイトの監査、毎週の見回り。ブラウザを操作するか、ファイルを読み書きするか、API を叩くか。どれも テキストの世界 の住人だった。

今回は違う。レーザー加工機の専用ソフトは Windows のデスクトップアプリで、ブラウザ拡張も API も効かない。AI がやったのは、人間とまったく同じ方法 — 画面を見て、クリックして、キーを打つ。いわゆるコンピュータ操作で、初めて「機械の手前のソフト」まで到達した。

AI がやった操作の中身

流れはこうだった:

工程内容私の関与
1xTool Studio を起動して最前面に出す
2操作対象をサブモニターに切り替える(ソフトの画面はサブ側に出る構成)
3デザインの SVG をインポート(ショートカットでファイルダイアログを開いて指定)
4パーツごとに加工方法を割り当て(輪郭=切断、ロゴ=彫刻)割り当て結果を目視
5素材を選んで、端材でテスト → 本番の照射開始ボタンは私

スクリーンショットを撮って、ボタンの位置を探して、クリックして、また撮って結果を確かめる。人間の新人がソフトを覚えるのと同じ手順で、ぎこちないけど確実に進んでいく。見ていて面白かったのは、つまずき方まで人間っぽいこと。ウィンドウが最前面にないとクリックが空振りする。メインモニターを見ていても、肝心の画面はサブモニターに出ている。「あ、それ私もやる」というやつばかりだった。

ベクターのレイヤーには スコア(薄く線を焼く)/彫刻/切断 の 3 種類の加工が選べる。AI はレイヤー一覧からカット線とロゴを見分けて、それぞれに正しい加工を割り当てるところまでやった。

設計データの工夫:1 枚の SVG にまとめる

試行錯誤の末に落ち着いたのは、カット線とロゴ彫刻を 1 つの SVG にまとめる 方式。輪郭のカット線は赤いストローク、ロゴは塗りで描いておいて、ソフト側で「赤い線は切断、塗りは彫刻」と線種ごとに加工を割り当てる。

分けて 2 ファイルにすると、インポートのたびに位置合わせが要る。1 ファイルなら、最初から重なった状態で入ってくる。SVG に実寸(mm)を書いておけば、スケールも勝手に合う。地味だけど、「設計の段階で位置合わせを終わらせておく」が今回いちばん効いた工夫だったと思う。

物理の世界ならではの注意

調べる途中で、ひやっとしたことがひとつ。革なら彫刻も切断もできるが、PVC(塩ビ)の合皮はレーザー切断厳禁。焼くと有害なガスが出る。見た目はどちらも「合皮」なのに、レーザーに掛けてよいものといけないものがある。

これは AI が調べて教えてくれたことでもあり、同時に「ここだけは毎回人間が確認する」と決めたことでもある。手元の素材が本革なのか PU なのか PVC なのか。タグと手触りで確かめて、レーザーに載せてよいか判断するのは、私の仕事。画面の中の失敗はやり直せるが、有害ガスはやり直せない。

最後のボタンは私が押す

加工の割り当てが終わると、あとは開始ボタンを押せばレーザーが動く。ここは AI に押させない。レーザーの照射は不可逆で、ミスれば革が一枚焦げて終わる。

これは弥生の取込で最後の「確定」を私が押すのと同じ構造。不可逆な操作は人間に残す、がうちの運用で、それは物理の世界でも変わらない。むしろ物理のほうが厳格になる。デジタルには undo がある操作も多いけど、焦げた革に undo はない。

だから、いきなり本番の革にも照射しない。試し切り用の端材で出力と速度の当たりを付けてから、本番に行く。この「端材から始める」という段取りを決めるのも、人間の仕事として残った。

学び:AI の守備範囲が「機械」まで伸びた

できあがったキーホルダーは、ちゃんとかわいい。革の焼ける匂いとともに出てきた小さなタグに、見慣れたロゴが焦げ茶色で入っている。画面の中で何百回も見たロゴが、初めて手に載った。これは素直にうれしかった。

AI の守備範囲は「PC の中」から「PC につながった機械」まで伸びてきた。
ただし物理の世界は、失敗が物として残る。安全確認と不可逆ボタンは人間の仕事。

デザインの修正、ソフトの操作、加工の割り当て。そこまでは任せられる。素材の安全確認、端材での試し切り、最後の照射ボタン。そこからは私。この線引きさえ決まっていれば、レーザー加工機は「AI と共用できる工作機械」になる。次に作る物は、もう決めてある。